カラダを支配してしまっているもの

無意識・無自覚に塗り固められた自分の狭い範囲の拘り・世界観・行動様式・思考・知識・感情・感性や過去の歴史、固定観念で自分自身(仮の自分)を作り上げている。つまり、癖や習慣。生まれて今日まで身についた色々な癖によって、私達は動かされていることが一日のうちでほとんどを占める。自分の考え方や感じ方など、自分そのものが無自覚な癖なのだ。意識の生き物であるはずの人間は、思いのほか意識でカラダの統制など行っていない。意外と意識の力が弱くなっている。

無意識反射。お決まりの反射的緊張や反応の繰り返しが癖となって身体に染み付いているのだ。その根本は、人間の防御本能や免疫の過剰反応にある。その積み重ねや繰り返しが、あらゆる身体機能(神経・内分泌・内臓・循環・呼吸)の偏りを生み、カラダの姿勢や動作にも偏り・歪みや癖を作る。癖(=カラダが無意識に緊張したり、無意識のうちに硬くなってしまったりするの)は、今・ここに在る本来の自分と対立している現われなのです。カラダが和やかではない状態というのは、その人の生活の中にカラダが対立反応を起させているものがあったり、過去からそのようになる原因を引きずっているといえます。

そのようなカラダをコントロールすることを忘れてしまった状態やどうやってカラダと付き合い、活かし(生かし)ていけばいいのかわからなくなってしまった状態をソマの記憶喪失/健忘症(Somatic amnesia, aka Sensory-motor amnesia)と言います。医学や科学の世界で数値化して診断できるものではありません。人の在り方の機能障害だからです。もうちょっと具体的に言えば、カラダを感じる取ることが出来なくなって、動作をコントロールすることが出来なくなった状態です。肩甲骨の動きの悪い人が多いですね。ただ単に悪いのではなく、どうやって肩甲骨を操作していいのか記憶喪失になってしまっているのです(記憶喪失なので。なぜなら、かつて---赤ちゃんのころなど--- は出来たはずだからです)。また、肩甲骨の状態を感知してこなかったために、そのような状態に陥ってしまったのだと言えます。感覚情報の戸切れが、運動機能の退化を生んでしまっています。感覚ー運動回路がおかしいのです。

そのソマの記憶喪失のきっかけ要因としては以下のことがあげられます。生きている・生きてきた中で、私達は怪我・トラウマ・手術・不安/恐怖感・抑圧された感情・(悪)習慣化した行動・動作様式、必要以上に繰り返された行動・動作によるストレインなどの心と体のストレス要因にさらされています。

ストレス要因がストレスにとしてカラダが受け取った時、カラダはある一定の反射反応(いわゆるストレス反応)で応答します。人それぞれの体癖によって、何がストレスとしてカラダに反射反応を引き起こさせるかは異なります(つまり、個人差がある)。また、体癖やストレス要因によってどういう形の反射反応になって現れてくるのか違いが出ます。この反射反応が繰り返されていくと、その反応が慢性化して身についてしまい、自分の意志ではカラダをどうすることもできなくなってしまうのです。癖や習慣の形成です。意識的にカラダと繋がりが持てなくなって、自分の身体をコントロールできなくなってしまうのです。自分のカラダの中に生きていながら、カラダを“もの”や“異物”として感じるようになって行くのです。カラダが自分そのものという存在の現われとしてではなくなっています。例えば、病気や怪我をした時にカラダの修理屋を求めるような考え方や観点をする人です。結果としては、いわゆる老化現象、成人病、生活習慣病、悪い姿勢(姿勢/骨格の変形)、回復力の衰え、痛み・疼痛、障害、慢性疲労、体の凝り、心の病などが起こります。

この状態から脱出するには、感覚器官と運動器官の間の情報流通回路をグレードアップしたり、リセットしたりする必要があります。まず、自分が無意識のうちに自分の癖に囚われてしまっていることを自覚せねばならない。自分への自覚を高めることで、自分を修正していく道を歩き出せる。『後来習態の容形を除き、本来精妙の恒体に復す』を目指します。これを実現するためには、まず内観を行い、自分自身の癖を見つめ直し、徹底的に自己否定をしなければならない。(注意:自己否定とは自分の存在を否定することではない。知らず知らずの自分というもの、常識や先入観などを疑ってかかることを言っている)。自分の体癖やお決まりの反射反応パターンに対する理解を持っていると有効で、自分のことを知る助けになります。

Thomas Hannaは(Hanna Somatic Educationでは)、お決まりのストレス反射反応を大きく3つに分けました。その3つの複合の形がもっとも頻繁に観察する人の姿です。それを更に進めて、私は基本形を5つに分類しました。プラクティショナーがこの分類を用いることで、無意識反射パターンからの解放が予測可能で、対応可能になっていきます。更に、表面に現れている姿(外相)を読み取るだけではなく、裡の姿(内相)を読むことも可能になりました。この内相を読めるか読めないかで、リハビリ・トレーニング・コンディショニングの効果が大きく異なってきます。特に、アスリートの万全な状態での早期現場復帰を手伝うトレーナーにとっては、今後必須の技術になると思っています。(---非常に分かりにくく習得しにくいものなので、今のところ人に伝授できる術を持っていません。---御免)
by somaticcoach | 2005-09-27 00:10 | Somatics